地球秩序の構造変動と日本の経済・安全保障戦略〜グローバル公共財学の構築に向けて

URL:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_y.htm

[プロジェクトの概要]
グローバル公共財と呼ばれるものを対象に,シミュレーションと従来の理論的枠組みを融合し,新たな知見を生み出そうというプロジェクト


[知見]
●グローバル公共財とは以下の3つの特徴を持つ
・対価を支払わないで便益を享受するもの(フリーライダー)を排除できない
・消費が競合しない(誰かが取ったところで減るものではない)
・便益が国境を越えて広がる財・サービス

また,二酸化炭素の排出のように,合計量が問題となるものと,新型インフルエンザの予防のように,最小値が問題となるものの2種類が存在する.


●シミュレーションの効用と限界
シミュレーションは,起こるのは極めてまれだが,多大な影響を及ぼすブラックスワン的な現象は扱えない.扱える不確実性の範囲は,ティッピングポイント(爆発的普及の閾値)が明らかである現象のみである.例えば,シミュレーションでは,洪水時の避難経路の混雑具合や,感染症の流行は予想できるが(評価軸が明確),ソ連の崩壊や9.11など(新たな評価軸の出現)は予想できない.そして,社会により大きな影響を与えるのは得てして後者の,事件である.


●「安定」のパラダイムシフト
地球秩序の安定という話をしている際に,いかに現状を維持するかということが「安定」として語られていた.しかし,自分は,動的な安定性,つまり代わり続けることが安定になるのではないかと,ふと思った.


竹中平蔵さんの印象に残った言葉
「中国で開催されるサマーダボスに代表されるように,国家や国際機関以外のものがイニシアティブをとるようになってきている.」
福澤諭吉の『学問のすすめ』は当時,人口3500万人の日本で340万部も売れた.」「福澤諭吉は,『悪い政府をつくるのは悪い国民である』と喝破した.」
「一般的に,多国間協調がいき過ぎると危ないと感じている.具体例としては,アメリカが1930年代の恐慌時に,まず一国だけで金本位制から抜け,それが他国の管理通貨制度への移行を誘発した.」

途中,派遣切りにあった大学職員を支援する団体の方が入り,場が騒然となったが,竹中さんは落ちついており,後半では機転を利かせてそれをネタにして笑いをとる場面もあり,頭の回転の鋭さを感じた.