増田直樹[2007]私たちはどうつながっているのか‐ネットワークの科学を応用する‐

主にコンピューターシミュレーションの世界のネットワークの研究成果を実生活に対応させて説明している本.ネットワーク理解の肝はスモールネットワークやスケールフリーという2つの概念だと述べ,それぞれについて具体例を交え解説している.

p.54 弱い紐帯(チュウタイ)
アメリカの社会学者M. S. Granovetterの研究 ‘The strength of weak ties.’
一見すると弱そうに見える枝が,情報を運ぶ上では強い力を発揮しうる.
具体的には,たまにしか会わない親友が,実は重要な情報を教えてくれたりする.

p.73 近道を維持するコスト
近道を持っている人は,ハブとして情報の結節点になることができるが,それを維持するにはコストがかかる.

p.141 出会いの軌道にのっている
知り合いが多い人はさらに多くの人と知り合いになる可能性が高い.

p.157 先住権
早くネットワークに入ってきた人のほうが,ハブになりやすい.また,異性との出会いも,先住権がものをいう.

p.183 科学研究の生産性を左右する要因
ノースウエスタン大学のギメラはブロードウェイと科学研究の生産性を比較した.チームの風通しのよさ,チームの「適度な」多様性の維持,経験豊富な人の存在が生産性と正の相関があった.

p.193 媒介中心性
情報を渡すハブになるヒトを媒介中心と呼ぶ.多くの人とつながっている必要はなく,異なるクラスターをつなげる役割を持っている.
情報の流れのボトルネックを探すときにこの概念が使えそうだ.

p.206 ランダム・ウォーク中心性
ランダムに情報が流れたとして,多くその人を通過した場合,その人はランダム・ウォーク中心性をもつ.これはリアルの中心性の概念と近い.
中心性から情報のボトルネックを考えるとき,枝の情報を通過させられる容量を考える必要がある.

参考文献

Structure and tie strengths in mobile communication networks
J.-P. Onnela, J. Saramäki, J. Hyvönen, G. Szabó, D. Lazer, K. Kaski, J. Kertész, and A.-L. Barabási
Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 May 1

Empirical analysis of an evolving social network
Kossinets, G. ; Watts, D.J.
Science, 2006, 311, 5757, 88-90, American Association for the Advancement of Science

Analysis of a large-scale weighted network of one-to-one human communication
Jukka-Pekka Onnela et al 2007 New J. Phys. 9 179 doi: 10.1088/1367-2630/9/6/179

Team Assembly Mechanisms Determine Collaboration Network Structure and Team Performance
Roger Guimerà, Brian Uzzi, Jarrett Spiro, Luís A Nunes Amaral. Science. Washington: Apr 29, 2005. Vol. 308, Iss. 5722; pg. 697, 6 pgs