書評

山下和也 [2004] オートポイエーシスの世界―新しい世界の見方

オートポイエーシス (autopoiesis) は、1970年代初頭、チリの生物学者ウンベルト・マトゥラーナとフランシスコ・バレーラにより、「生命の有機構成 (organization) とは何か」という本質的問いを見定めるものとして提唱された生命システムの本質に迫ろうとす…

Paul Krugman [2000] 良い経済学 悪い経済学

本書は、元の題名”Pop Internationalism”のとおり、国際的な経済問題について、非常にわかりやすく解説をしている。あとがきの解説に「経済学を学ぶ目的は“エコノミスト”に騙されないで自分の頭で考える力をつけることである」とあるが、そのための入門書と…

西水 美恵子 [2003] 貧困に立ち向かう仕事

プリンストン大学の経済学部の助教授から、世界銀行へ、というキャリアを進んだ西水さんの著書。「現場を体感する」ということの大切さを再認識させられた。他にもこの本の大きな収穫は以下の二つだった。 Educate a boy, you educate a human being. Educat…

Kevin Kelly [1999] 「複雑系」を超えて

さまざまな「複雑系」(wikipedia)について、The techniumの著者で著名な研究者?であるKevin Kellyが紹介と考察を行ったのが本書だ。複雑系とは、極めて多数の要素からなり、それぞれの要素間の相互作用が存在するため、従来の還元主義的な(ものごとは部分の…

ジャック・アタリ [2008] 21世紀の歴史

いかなる時代であろうとも、人類は他のすべての価値観を差し置いて、個人の自由に最大限の価値を見出してきたp.19序文-21世紀の歴史を概観する 前半部では、まず過去の歴史を振り返る。1200年代のベルギーの中心都市、ブルージュから始まり現在のロサンジェ…

猪木武徳 [2009] 戦後世界経済史

本書で著者は,戦後経済を読み解く視点として下記の5つを挙げ,ともすると発散しがちな戦後の世界経済史を350ページ強にまとめている.・市場の浸透と公共部門の拡大 ・グローバリゼーションと米国の時代 ・所得分配の不平等 ・グローバル・ガヴァナンス ・…

湯川秀樹, 梅棹忠夫 [1967] 人間にとって科学とは何か

本書は,ノーベル賞学者の湯川秀樹と,『知的生産の技術 (岩波新書)』でも有名な梅棹忠夫の対談本である.1960年代後半の段階で,計算機による情報伝達における,情報の「意味」について考えていたり,「関係」を対象とする科学の出現を予言したり,両氏の先…

菅 正広 [2009] マイクロファイナンス-貧困と闘う「驚異の金融」

本書では,グラミン銀行をはじめ,世界各国のマイクロファイナンス事業を紹介し,それらの事例から日本国内の貧困を解消するために実施可能な方策を提案している.「レモン問題」とは,財・サービスや取引の内容に関する情報が買い手によく知られていないた…

ムハマド・ユヌス [2008] 貧困のない世界を創る

貧困にあえぐ人々を,融資の借り手自身の力によって貧困から脱出させる「マイクロクレジット」という仕組みを構築したグラミン銀行の創立者,ムハマド・ユヌス氏の著書だ.読んでいて興奮した書籍は久しぶりであった. マイクロクレジットの効果1983年,村の…

T・バトラー=ボードン(著)米谷敬一(訳)[2008] 世界の心理学50の名著

研究で、社会心理学的な知見を必要とするので手に取ってみた。現代心理学理論辞典とはことなり、学問としての心理学にこだわらず、ダニエル・ゴールマンの『ビジネスEQ』から、スタンレー・ミルグラムの『服従の心理』まで、ここ100年位に書かれた欧米の名著…

グレゴリー・クラーク(Gregory Clark)著,久保恵美子 訳 [2009] 10万年の世界経済史(上)(下)

ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』では、各大陸の進化の違いは、偶然の地理的要因によるとした。本書では、そこで取り扱われなかった経済的活力の違いに焦点を当てている。上巻では、産業革命によってマルサスの罠(食糧生産は等差数列的に増加す…

現代心理学[理論]辞典

辞典というものは、基本的に情報の羅列だ。検索というシステムがなければ成り立たない。しかし、この辞典は、各分野における心理学の理論を網羅的に取り扱っている。一章を順に読むことで、その分野の全体像をつかむことができる。心理学の概要をつかむのに…

ナシーム・ニコラス・タレブ(著),望月衛(訳)[2009] ブラック・スワン(下)

ほとんどのリスク予測に欠陥があると認めるならば,取るべき戦略は可能な限り超保守的かつ超積極的になることだ.実生活においては,有利な結果が生じたときの方が,不利な結果が生じた時よりもずっと大きい非対称な状態に自分を置くのである.まさにVantage…

ジャレド・ダイアモンド(著),楡井 浩一(訳)[2005] 文明崩壊(上)(下)

前著『銃・病原菌・鉄』では,大陸や地域ごとの進化のスピードの違いを,環境要因の面から考察し,与えられた環境における些細な差異が,数千年後の文明・技術の発展における大きいな違いを生むと述べていた.本書では,環境要因の中でも,その破壊が人間生…

ジャレド・ダイアモンド(著) 倉骨 彰(訳)[2000] 銃・病原菌・鉄(上)(下)

なぜ,スペイン人がインカ帝国を征服し,逆は起こり得なかったのか. その原因は,環境要因が各大陸によって異なるからだと著者は述べる.その中でも最も重要な違いを以下の4つの事実にまとめている. 1)栽培化や家畜化の候補となり得る動植物種の野生種の分…

杉万俊夫(編著)[2006] コミュニティのグループ・ダイナミックス

[概要] グループ・ダイナミックスはグループの現象を説明する上で,「全ての行為とその対象は,何らかの集合流に内在して初めて存立し,それらは集合流の一コマに他ならない」という前提に立ち,個々人の心に還元して説明することはしない,つまり心理主義の…

ナシーム・ニコラス・タレブ(著),望月衛(訳)[2009] ブラック・スワン(上)

[概要] [問1] (1) アメリカのどこかで大洪水が起こり,1000人を超える人が無くなる (2) カリフォルニアで地震が起こり,それが大洪水を起こして1000人を超える人が無くなる どちらの方が起こりやすいだろうか.[問2] (1) ジョーイは幸せな結婚生活を送ってい…

バーバラ・ミント(著),グロービス・マネジメント・インスティテュート(監修),山粼康司(訳) [1999] 考える技術・書く技術

[概要] ¶ピラミッドの構成 •横方向には同レベルのメッセージが演繹的または帰納的に関連する •縦方向には’why’ あるいは’so what’の疑問に答えるようメッセージが関連する •縦方向にも横方向にも3つ以内で整理する¶キーメッセージ •導入:読み手の疑問,状況…

マーク・ブキャナン [2005] 複雑な世界、単純な法則−ネットワーク科学の最前線

[概要] ハーバート・サイモンが言った「科学の目的は,秩序なき複雑性のうちに意味ある単純性を見いだすことである」という方向に向けて,「いまわれわれが目の当たりにしているのは,還元主義と極めて緊密に結びついた過去の科学から複雑系適合性物質(創発…

原 研哉 [2003] デザインのデザイン

[概要] 「デザイン」とは一体何なのか.本書では,豊富な写真と例により多くのデザインが紹介されている.しかし,前書きで筆者が本書を読んでデザインというものが少しわからなくなったとしても,それは以前よりもデザインに対する認識が後退したわけではな…

安田雪 [1997] ネットワーク分析

[概要] ネットワーク分析とは,数学的手法を用いて,複雑怪奇な個人や集団間の関係を整理し,法則性を見出そうとするアプローチである.「歴史は繰り返される」という言葉に代表されるように,個人や環境の影響は無数に考えられるが決定的な影響を及ぼすもの…

佐々木正人(編)[2007] 包まれるヒト

ヒトとは,環境に包まれている.特に,「光学的情報による身体と環境のカップリング」というコラムが興味深い.オプティカル・プッシュという現象を取り上げているのだが,これは力が働いていない状況でも,近く情報の変化からあたかも力が働いているかのよ…

Carliss Y. Baldwin, Kim B. Klark, 安藤晴彦(訳) [2004] デザイン・ルール-モジュール化パワー

【概要】 インターフェースとはモジュールの内部を隠すものである.ある物体の形態は,それに作用している,または作用していた『推進力(フォース)の図解』であるという言葉が示すとおり,インターフェースの形態は各モジュール間の相互作用の結果であり,イ…

梅田望夫 [2008] ウェブ時代5つの定理

【考えさせられたこと】 通貨としての時間を適切に,そして時には無駄に,消費できているか. 自分は本当に,価値を100倍にすることに取り組んでいるか. Greatと言われ,そこに満足していないか.We run the company by questions, not by answers. Eric Sc…

レイモンド・チャンドラー,村上春樹(訳) [2007] ロング・グッドバイ

さよならを言うのは,少しだけ死ぬことだ.ロング・グッドバイレイモンド・チャンドラー / 早川書房 ( 2007-03-08 ) /shikaのバインダーで詳細を見るMediaMarker

斎藤嘉則 [1997] 問題解決プロフェッショナル−思考と技術−

【概要】 問題解決の際によく言われるのが「空,雨,傘」だ.事実からアクションプランを策定する際に,考える手順は以下の通りだろう. ・空が曇っている(事実) ・雨が降りそうだ(示唆) ・傘を持っていこう(提言)本書ではより具体的に,問題解決の手…

喜田昌樹 [2008] テキストマイニング入門

【一言】 テキストマイニングの具体的方法と,応用例をまとめた本.コミュニケーションがITツール上で行われるようになればなるほど,解析のコストが減り,精度も上がる.そして,コミュニケーションの「質」の把握が容易になることから,ボトムアップとトッ…

梅田望夫[2007]ウェブ時代をゆく

【概要】 ウェブ進化論の著者である梅田望夫さんが,ネットのあちら側で起こっていることに対応して,ネットのこちら側でどのように生きていけばよいのかのヒントを書かれたもの【一言】 Only the paranoid survive Entrepreneurship Vantage point The only…

堀公俊,加藤彰 [2006] ファシリテーショングラッフィック

議論のファシリテーションの際に有効となるホワイトボードの使い方に特化して解説した本.具体的な例が多数掲載されている.方法論を紹介した本に共通なのは,それを実践するまでは,理解したことにならないということだ.【引用】 p.65 文字を丁寧に書くた…

細谷功[2007]地頭力を鍛える-問題解決に活かす「フェルミ推定」

【一言でいうと】 人の頭の良さを,知識,対人感性力,地頭力の3つの軸で切り,地頭力を鍛える具体的方法を「フェルミ推定」を解く上で必要な能力に分解して解説した本.【引用】 p.25 地頭力に固有の三つの思考力 ・結論から考える仮説思考力 ・全体から考…