ナシーム・ニコラス・タレブ(著),望月衛(訳)[2009] ブラック・スワン(下)

ほとんどのリスク予測に欠陥があると認めるならば,取るべき戦略は可能な限り超保守的かつ超積極的になることだ.

実生活においては,有利な結果が生じたときの方が,不利な結果が生じた時よりもずっと大きい非対称な状態に自分を置くのである.

まさにVantage Pointに身を置くということは,上記条件に当てはまる.

[引用]
p.15将来は予測できない
私たちは将来できる発明を思い描くことができない.(それができるはずなら,もう発明されているはずだ)

例えば今後10年の政策,といった月並みの国に属するようなことしか予想できないのだ.


p.52未来を見るのに不自由
人は,「私が知っていることを私がしらないことを彼が知っている」みたいな単純なことを考えられない.

過去の出来事から未来を予想する際に,自分の頭の中の過去をそのまま延長してしまいがちである.過去と未来の間に,偶然がもたらす非対称性はあまりに微妙なので,私たちの頭ではそのまま理解することができない.


p.70ブラック・スワンを回避するバーベル戦略
ほとんどのリスク予測に欠陥があると認めるならば,取るべき戦略は可能な限り超保守的かつ超積極的になることだ.
具体的には,85%~90%を非常に安全な資産に投資し,残りをものすごく投機的な賭けに投じる,

実生活においては,有利な結果が生じたときの方が,不利な結果が生じた時よりもずっと大きい非対称な状態に自分を置くのである.
1)いい偶然と悪い偶然を区別する:いい方の偶然には最大限身をさらし,悪い偶然からは可能なかぎり身を引く
2)細かいことは一切見ない:どちらの偶然にしても,私たちは予測することができないということを肝に銘じること
3)チャンスには片っ端から手を出す:チャンスに対するエクスポージャーを最大化する


p.105知的生産に凡人はなんの役割も果たさない


p.168べき数は予測できない
年収が1000万以上の人と,その二倍である2000万以上の人を比べると人数が4分の1になったとすると,指数は2だ.これが,年収2000万以上と4000万以上の人を比べた時にも人数が4分の1になったとすると,所得と人数の関係はべき乗則に従い,フラクタル(拡張可能)であるとする.

だが,べき数が1のとき,上位20%のシェアは99.99%だが,べき数が2になると,上位20%のシェアは45%まで落ち込む.べき乗分布に従うということはわかっても,べき数を予測することはとても難しい.分布は拡張可能でフラクタルだというだけで十分に意思決定が行えるのだ.


p.217電車を逃して残念なのは捕まえようと急いだときだけだ
自分の意志でイタチごっこや序列を捨てるのなら,それはイタチごっこや序列を外れるのではなく超えるということだ.