Carliss Y. Baldwin, Kim B. Klark, 安藤晴彦(訳) [2004] デザイン・ルール-モジュール化パワー

【概要】
インターフェースとはモジュールの内部を隠すものである.ある物体の形態は,それに作用している,または作用していた『推進力(フォース)の図解』であるという言葉が示すとおり,インターフェースの形態は各モジュール間の相互作用の結果であり,インターフェースの巧拙がモジュール性の効果を左右する.


【引用】
第1部
p.61 設計のパラメータのなかの循環
手戻りを防ぐためには,パラメータ間の相互依存性を集約する必要がある.その道具として,DSM (Desing Structure Matrix)やTSM (Task Structure Matrix)が有効である.

p.76 モジュール化の定義
「モジュール内では相互依存し,モジュール間では独立している」
実現するためには構造(architecture)が必要となる.
インターフェースとは情報を隠すものである.可視情報と隠された情報を区別する必要がある.

p.85 三段階の設計プロセス
(1) デザイン・ルール段階
(2) 独立・並行作業段階
(3) システム統合・検証段階

p. 117 異なるタイプの価値
・事前(ex ante)に予測された価値と事後(ex post)に実現された価値
・個人的価値と市場価値
・製品市場で測定される価値と資本市場で測定される価値

p. 146 モジュール化オペレータ
1.Splitting:ある設計とそのタスクを「分離」する
2.Substituting:一つのモジュール設計を他の物に「交換」する
3.Augmenting:新しいモジュールをそのシステムに「追加」する
4.Excluding:あるモジュールをシステムから「削除」する
5.Inverting:新たなデザイン・ルールを創造するために「抽出」する
6.Porting:あるモジュールを他のシステムに「転用」する
最初の2つのみ,非モジュール型設計にも適用できる.

p. 151 新しいタスク構造からの新設計
全体の設計・タスク構造を見ることができ,個々の部分の関係性を熟知している設計者によって構想され,実行されなければならない.


第2部
p. 236 設計のモジュール化と設計プロセスの微修正
IBMは360を設計する際に,モジュール化と互換性によって,強豪優位性を得た.しかし,それを実行するタスク構造(営業・販売などのサプライチェーン構造)は既存の契約構造を微修正しただけだった.

p. 270 限定合理性と盲目性は適切に設定せねばならない
モジュール化を実現しうるのは,設計者が一定の予見を持ち,設計プロセス自体を制御可能だから.


第3部
p. 270 モジュール性は設計者のある程度の予見性を前提とする

p.290 設計の3段階
タスク構造を設計する費用
タスク構造を実行し,モジュールを組み立てる費用
結果を検証し,他のオプションを実行する費用

p. 306 モジュールの分離は収穫逓減的に価値を増加させる

p. 313 モジュール化は投資価値のなかった2番目以降のオプションにも投資価値をもたらす

p. 328 すべてのモジュールの可能性を検証することは,検証コストの面から不可能

第4部
p. 416 ある物体の形態は,それに作用している,または作用していた『推進力(フォース)の図解』である
生物学者ダーシー・トムソン 『成長と形態について(On Grouth and Form)』

p. 437 フォースのダイアグラム
・技術的機会(本来備わったオプション価値)
・技術的コスト(モジュールの実験,検証コスト)
・取引費用およびエージェンシー・コスト(下請けが注文通りに動くかを確認するコスト)