ジャック・アタリ [2008] 21世紀の歴史

いかなる時代であろうとも、人類は他のすべての価値観を差し置いて、個人の自由に最大限の価値を見出してきた

p.19序文-21世紀の歴史を概観する

前半部では、まず過去の歴史を振り返る。1200年代のベルギーの中心都市、ブルージュから始まり現在のロサンジェルスに至るまで、世界の歴史で中心的な役割を担ってきた都市の系譜を読み解く。中心都市化が生じる初期には、ネットワーク外部性がはたらき、発展が発展を呼ぶという好循環を生み出す一方で。成熟期には、収穫逓減の法則が働き、発展の速度は収束する。そうした発展と衰退のダイナミクスから著者は次のような普遍的な原理原則を導き出す。例えば、「外国人エリートの受入れは成功の条件である。」「新たなコミュニケーション手段の確立は、[中略]時の権力者には、情け容赦のない障害をもたらす。」「戦争の勝利者となる国とは、常に参戦しなかった国、またはいずれにしても自国領土で戦わなかった国である。」といったようなものである。そのような普遍的な原理・原則から、後半部では、未来の行方を予想する


後半部で著者が予想した21世紀の歴史の詳述は避けるが、新たな歴史の担い手をトランスヒューマンというカテゴリの人々としている。彼らは、愛他主義者で、人道支援や他者に対する理解に熱心であり、自分たちの活動のために必要な手段を自ら開発する。個々のメンバーの知識や行動力を足し合わせたものよりも大きな、集団の智恵、あるいは集団の叡智という無尽蔵な資源の分配を通じて、市場では解決のつかない問題を扱い、世界の行方を修正していく。そこでは、マイクロファイナンスなど、人々をエンパワーする仕組みの存在感が急速に増していくという。


ジャック・アタリの想像した21世紀の世界で活躍するためには、
・自身が主体的に知識や経験を提供し、集団の叡智の一部となることで、世界に貢献すること
・自身の関与はあくまで間接的で、集団の叡智の創出を促し、世界に存在するニーズと結び付ける仕組みを作ること
の二つが考えられる。

自分の思考はどちらかというと後者なのかなとも思う。仕組みづくりという視点から、どのような貢献の仕方があるのか、具体的に探っていきたい。