安田雪 [1997] ネットワーク分析

[概要]
ネットワーク分析とは,数学的手法を用いて,複雑怪奇な個人や集団間の関係を整理し,法則性を見出そうとするアプローチである.「歴史は繰り返される」という言葉に代表されるように,個人や環境の影響は無数に考えられるが決定的な影響を及ぼすものは一握りではないかと考えられる.ネットワーク分析はそれが何かを明らかにするアプローチの一つとなりうる.



[引用]
p.33二者関係と三者関係
禁じられた三角形に見られるように,ネットワークは点と線の二者関係だけで表わされるのではなく,三者関係まで考慮する必要がある

p.39バルネラビリティ(Vulnerability)のパラドックス
・他者の力を必要とする者ほど,他者から力を引き出す可能性が高い
・力の強い人が行為を行った結果としてバルネラブルナ立場に陥ってしまう(関わり合いになったが故に,文句をつけられる)

p.48行為者とイベント関係のインシデンス行列
イベント−イベント,行為者−行為者,イベント−行為者の3つの観点からネットワークを分析する

p.103ネットワーク内で似ているということ
構造同値:構成員同士を入れ替えても,本質的な構造には全く変化がない状況
役割同値:部長の下に所属する課長は役割同値(部下の数により構造同値であるとは限らない)

p.111クラスター分析
何を知りたいかによって,類似性のあるグループをまとめる際に用いる軸を変更する

p.118ネットワーク優位性によるバーゲニングパワー
同種の企業同士で結束し,代替となるライバルと競争しなくて済む差別化要因を持ち,リンクを結束していない相手に出し自身のバーゲニングパワーを行使する

p.133同類原理
強い紐帯で結ばれる人は,いろいろな側面において似てくる

p.155直接関係がない人の影響
構造同値の軸と,直接結合の有無の軸の2軸で整理すると,4つに分類できる.このうち,直接結合はないが,構造同値である場合,直接関係のない者同士が影響を及ぼし合う場合がある.