システムとしてみた現象―正直村と嘘つき村の話から


正直村と嘘つき村の話

右の道を行くと,ひとつの村があります。
左の道を行くと,もうひとつの村があります。

一つの村は嘘つき村で,もう一つの村は正直村です。
嘘つき村の住人は誰もが,絶対に嘘をつく。
正直村の住人は絶対に正しいことしか言わない。

わかれ道の入り口に嘘吐き村から一人,正直村から一人,人が二人立っています。

<ルール>
・正直村の住人は、正しいことしか言いません。
・嘘つき村の住人は、絶対に嘘を言います。
・質問はひとつだけです。
・質問はイエスとノーで答えられるものだけです。

例えば,「右の道は正直村への道ですか?」と聞いても,
正直村の人は「はい」,嘘つき村の人は「いいえ」と答え,どちらが正解かわかりません。

正直村にたどり着くためにこの村人たちにひとつ質問だけ質問できるとしたら,どんな質問をしますか?

よく知られているなぞなぞに少し制約条件を加えてみた。




この現象を「システム」という観点からモデル化してみたい。
正直村の住民をA,嘘つき村の住民をBとする。
例えば右の道が正直村へ続く道だとすると,Aに「右の道は正直村への道ですか?」という質問をすると,「はい」と答える。Bに同じ質問をすると「はい」が真実なので「いいえ」と答える。これを図に表すと以下になる。

問題は,両者の解答が異なること。解決への道 は関数1の部分で,2者の解答(真実)が異なる質問(INPUT)をすることだ。それができれば,解答(OUTPUT)が一致し,真実を表すことになる。 そこで注目すべきはモデル1の解答だ。解答はAとBで異なる。これをもう一度関数に入れてやれば,答えが一致し,真実が導かれる。

このように単純にモデル化して不必要な情報をそぎ落とし,考えやすくすることが,システムとして現実を捉える(シミュレートする)効用だ。ただ,現実の問題をシステムとしてとらえるためには3つのことが必要となる。前提条件を仮定すること,何を知りたいのかの目的(仮説)を持つこと,そしてモデルを作ることだ。
今回の例で言うと,前提条件は正直村の住人は100%正しいことを言うという,質問は「はい」と「いいえ」で答えられるもののみということ。目的は解答(OUTPUT)が一致する質問(INPUT)を知りたい。モデルは図に示した通りだ。

システムを作る際に前提条件を仮定することが一番の肝だ。そこで必要な情報以外の情報をそぎ落とすからだ。だが,現実の事象を捉える際には,ここで不必要だと判断された情報が実はモデルに影響を与えてモデルが現実と一致しないということが起こりえる。

工学に比べて経済学のモデルの精度が低いのは,考えるべき事象に関係する変数の多さ,つまりそぎ落とした情報が結果に与える影響の大きさだろう。