経済−なぜ成長し続ける必要があるのか

経済学はインセンティブの学問だと言われるらしい。インセンティブを媒介する物がカネだ。そこで,ふとした疑問が浮かんだ。なぜ成長すること(好景気)がよくて,停滞すること(不景気)が悪いのだろうか。

お金を多数から集める株式会社というシステムがその理由を端的に表している。お金を集めるための貸し手にとってのインセンティブは,集めたお金で何かの付加価値を生み出して,お金を増やして返すということ。つまり,成長し続けなければ破たんするシステムなのだ。だから,「なぜ成長するのがよいのか」と問いに対する答えは,「成長をよいとするシステム,成長しなければ破たんするシステムを構築したからだ」になるのだろう。

この基本的仕組みは今後何百年も変わらないのだろうか。あるいは,物の移動コストゼロのネットの登場で何かが変わるのだろうか。

まずはノンバイアスの状態で考えてみる。

株式会社を作る人の行動のプロセスを分解し,それにネットが影響を及ぼしうる部分にコメントをつけてみた。

「何か世の中に価値を生み出したい」

「元手(人手やお金)がいる」…(1)本当に元手が必要?

「元手を集めよう」

「誰かから借りるしかない」…(2)借りる以外に元手を集める方法は?

「貸す人にリターンを保証しないと貸してくれない」…(3)元手を集めるのにリターンが必要

金利キャピタルゲインや配当として,お金をリターンにしよう」…(4)お金以外のリターンはない?

「成長して利益を出して,リターンをしないと…。」


ネットが(1)〜(4)に与えうる影響について考えてみる
(1)元手の必要性
・元手がなくてもネット上ならば簡単に価値を作り出すことが可能
・ネット上にあるものを元手として利用可能
(2)元手を集める方法
・大多数の人から少額の寄付をコストゼロで集めることが可能
・人をネット上で(無料で)組織することも可能
(3)リターンの必要性
・直接自分に還元される価値がなくとも力やお金を貸してくれる人はいる
(4)リターンの種類
・生み出した価値をリターンとみなすことができる
・価値を生み出す過程に加わった経験がリターンになりうる


あらためて考えてみると,これらの要素はオープンソースを生み出す組織に当てはまる。『ウィキノミクス』の書評で書いたの焼き直しだ。

こう考えた過程が,経済学の基礎的な知識を得た後でどうかわるのか。勉強してみようと思う。