宮野公樹[2009]『学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術』化学同人

著者から著書をプレゼントいただいたので,書評を書いてみる.

今まで,プレゼンテーションについての本は多数あったが,スライド作成に特化した本はなかったのではないだろうか.資源を集中すれば,Outputは増加する.本書はスライド作成のセオリーのみならず,「スライド修正ライブ」と称したスライド修正の過程の具体例が70ページにも及んで多数掲載している.

筆者はスライド作成のテクニックとは「観客の目線を操る方法だ」と喝破している.「目線を操る」とは,2つの要素からなる.目線の動く順序,つまり観客の理解の優先度を操作すること.そして,目線の動く速さ,つまり観客の理解の速度を速めることだ.


筆者によると,スライド作成の基本的技術は(1)コントラスト (2)グルーピング (3)イラストレーション の3つに集約されるらしい.(1),(2)は「目線の動く順序」を操る技術,(3)は「目線の動く速さ」を操る技術に相当する.

技能の習得には,知識の習得(収束のフェイズ)と知識の実践(発散のフェイズ)が必要だ.本書は,シンプルな理論と,豊富な具体例で,収束と発散のフェイズが両方含まれた,すぐに使える本だといえる.