【紹介】マーケティングの最小単位は「人」ではなく「機会」だ―市場における原子

マーケティングについては,本を1,2冊かじった程度の知識しかない自分だが,目の前の霧が晴れるような視点を提供してくれるエントリーを読んだので紹介させていただきたい。

市場における原子(ぜひ全文を読んでください)

主張されていることを一言で言うと,マーケティングが把握すべき「市場」の最小単位は,セグメントした「同じ属性を持った人のグループ」ではなく,「何かを消費する機会」にある,ということだと自分は理解した。

また,違うエントリーで以下のような引用が紹介されていた。
市場の量的な調査と市場セグメントの分割は、製品を売るためには非常に役立つが、人々が実際に製品をどのように使うかについては大して重要な情報を与えてはくれない。特に、振る舞いが複雑な製品ではそれが顕著になる。
アラン・クーパー『About Face 3 インタラクションデザインの極意』
もうペルソナなんて言わない


風呂上がり,朝の会議前など同じ文脈にいる人は同じ行動をするであろう。それを「○○な人たち」という人の軸できるのではなく,「○○するという機会」という時間軸で切るという視点,つまり,「どんな人」よりも「どんな時」という視点のほうが,純度が高いという考え方は,腑に落ちた。


ここからは,余談だ。
野中郁次郎さんは,暗黙知の伝承するためには,場を共有することが有効だと述べられている。(「日本企業には復元力の源泉がある」


野中さんの主張を言い換えると,暗黙知を伝達するためには,同じ文脈で連続する機会を共有することが有効だということではないか。場を「○○な機会」の集合と捉えることで,どのような機会で人は暗黙知を共有しているのかと,より詳細な分析が可能になり,形式知暗黙知のスパイラルアップを活性化できる仕組みを作り上げることができそうだ。

また,イノベーションを体系的に起こしたいとなった時に,ひらめきをコントロールすることは難しいが,「機会」を意図的に提供する仕組みを構築することは可能だ。イノベーションが頻繁に生じると言われている組織の特徴を抽出する時に,組織の中での情報の流れや,評価システムなどの視点に加えて,イノベーションが生じる「機会」の集合=「文脈」を明らかにすることが,示唆を与えてくれそうだ。