博士課程に進む理由−自分の中にあるもの


『人を相手に仕事をすること』

でも述べたことだが,人の言うことを素直に受け止めるだけではだめだ。そして,2次,3次情報に頼り切って1次情報を拾うアンテナと,受け取った情報を考えることの2つの動作を鈍らせてはいけない。

ということで,『博士課程に進む理由−影響を受けたもの』で書いたことに加えて,今度は自分の内側に目を向けたいと思う。

『35歳くらいがゴールのためのスタートか 』
で,35歳で何かを始める。30歳はそのためのスタート。それまでは,世界のどこにいっても通用する自分を作るための修練期間だと書いた。では,そのために修士・博士一貫課程で3年間過ごすことの意義は何か。

それは,世界のどこに行っても通用する自分の基礎を作ることだ。その前提としては,学生という身分はルーティンワークが少なく,時間を自分でコントロールしやすいため,自分価値向上に直結したことに時間をより多く費やせる,という点がある。(註:工学系博士課程は一般的には実験や研究質の雑用などが多いらしいので,状況が異なるかもしれない。)

『プロとアマの違い−プロフェッショナルの要素は世界共通』

で述べた要素に加えて,もう一度,自分の基礎となる要素を整理してみたい。

直接的に(比較的短時間で)相手に伝わるものとして1.専門知識 2.仕事力(skill) 3.語学 の3つが考えられる。また,間接的に(長い時間を接すれば)相手に伝わるものとして,4.人格 5.教養 が考えられる。それぞれについて,(就職するのではなく)なぜ一貫過程で習得するのかについて理由づけをすると,

1.専門知識
専門知識を持つことは,世界のどこに行っても必要とされる要素の一つである。一つのことを3年間1日11時間,計10000時間やりつづけることで,その世界の第一人者に負けない知識量を手に入れられる。

2.仕事力(skill)
仕事術は世界共通であるが,その中でも明示的なモノやサービスを持たずに知識だけで仕事をしているコンサルタントの仕事力は高いだろう。それを間近で盗めるのはまたとない機会である。

3.語学
3年間のうちに英語圏の大学に半年〜1年留学することで,ビジネスとプライベート双方に通用する英語力を身につけられる

4.人格
多くの人との出会いが,深い人格を形成する。特に異分野,異文化の人との出会いは自分の人格の幅を大きく広げてくれる。学生という身分は,時間的余裕と選択肢の幅の広さを持っている。

5.教養
専門外のことに対する知識は,専門分野に示唆を与えるだけでなく,幅広い人間関係を構築する上で,また人生を楽しむために役に立つ。学生という身分は,異分野,異文化の人との出会いも相俟って,モチベーションの維持と時間の確保が容易である。

以上の5つを現在のところの,就職をせずに修士・博士一貫過程に進学した理由としておきたい。