ミクロ化するマスメディア

2008年の5月に日本の大手新聞社のベルリン支局に勤めている方と話して考えたことです.

テレビ,新聞社が軒並み減収している昨今,私の場合はネットやブログ,twitterSNSなどから情報を得る機会が多くなっています.海外に1年間暮らして感じた日本の特色として,日本のメディアは同じ方向性の報道しかしないということです.そこから,日本人はメディアに踊らされやすいという特性があると考えます.つまり,同じような方向性で視聴者が注目してくれる(踊ってくれる)から,同じような方向性になる,という悪循環です.

このように,現在マスメディアは世論形成に大きな影響を及ぼしています.しかし,「マス」メディアがある人に対する情報インプットの面で「ミクロ」メディア化した場合,どのような影響があるのでしょうか.2つの可能性について考えてみます.

一つは,情報取得源が限られたものになり,検索しない情報,つまり,自分の興味のカテゴリー外の情報を入れる術がなくなる.その結果,コミュニティーがよりクローズドになり,それぞれの利害が個別化し,世論形成が難しくなるという可能性です.

もう一つは,新聞やテレビ局の衰退で,一次情報を提供できる力を持ったメディアが限られてきて,皆が同じソースからの情報を得るようになる.そこで,多様な解釈は飛びだすものの,議論の土俵は限られたものになるという可能性です.

一つ目の可能性は,自分が情報を発信し,ネット上で出会うということを容易にした環境があるので,自ら情報発信している人には当てはまらないでしょうが,受け身の利用にとどまる多数の人には当てはまるかもしれません.

二つ目の可能性は,一次情報を発信できる個人のブログやサイトを検索情報の大海の中から拾い上げるプラットフォームが普及するか否かにかかっています.

どちらにしろ,ネットを積極的に利用しないであろう人にとっては,マスメディアの衰退は,よりメディアに流されやすくなる危険性をはらんでいると考えます.