行政とトランザクションコスト−権限の移譲度を取引費用で評価する


『日本の未来が見える村−長野県下條村、出生率「2.04」の必然』NBonline
地方自立政策研究所役割分担明確化研究会が著した『地方自治自立へのシナリオ』(東洋経済新報社)には興味深い例が出ている。「特殊教育設備整備費補助金」という国の補助金。実際の補助金額は13万6000円だが、事務コストを試算してみると、15万9000円がかかっていた。実際の補助金よりも事務コストの方が高いとはどういうことなのか。これは極端としても、補助金のかなりの部分が事務コストに消えているのは間違いない。

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ある研究によると,GDPにおける取引費用(モノ・情報・お金をやりとりする際に手続きにかるコスト)は一般的に50%程度を占めていると言われている.しかし,行政においてはその取引費用はさらに高くなるだろう.行政における取引費用が高くなる原因の一つは,上記記事にあるように中央省庁から地方へお金を下ろす際に何重にも手続きが必要だということだ.

しかし,現状では行政の仕組みをデザインする際に取引費用という観点はあまり議論されていないが,地方分権は,取引費用の観点からも理にかなったアイデアである.分権化すれば,お金の使い道の自由度が上がるだけでなく,何かの資金を得るための取引費用が減り,行政の生産性が上がると考えられる.

だが,一方で分権化して権限を地方に移譲してしまうと,例えば福祉や経済政策で国としての方向性を定めるために今よりも余計に取引費用がかかる可能性がある.こう考えると,取引費用の観点から適切な地方への権限移譲度を定量的に評価することができるのではないだろうか.

分権化と取引費用の関係は,今の時点での自分の最終ミッションである国際機関作りに役立ちそうなので,もう少し勉強してみよう.