怠け者同盟とそれを超える制度

怠け者同盟という一連のエントリーを読んでいて思ったこと.

著者は,以下のように『誰かの「働く自由」が誰かの「怠ける自由」を犯している』と述べている.

ところが、自由に働けるとあれば、同僚が正月とヴァカンスを取らない「自由」を持ちます。出世競争で負けたくなければ、自分も働くしか無いでしょう。ま た、ライバル点が同僚が正月とヴァカンスを取らない「自由」を持てば、自社の社員が路頭に迷わないためにも、対抗して正月とヴァカンスに働くことになります。つまり全員がエスカレートした競争に巻き込まれていきます。こう考えていくと以下の引用にあるように、誰かの「働く自由」が誰かの「怠ける自由」を犯 していることが分かります。
『自由のスパイラルから脱出を目指す怠け者同盟』フランスの日々

働く自由が,怠ける自由を奪う一番の原因は,「抜け駆け」が許されるか否か,にある.自由を建前に,長時間働き,その分より多く稼ぐという抜け駆けが可能な限り,怠けもの同盟は成立しない,と著者は語る.

抜け駆けを防ぐ仕組みとして,現在フランスで実施されている,週35時間労働制と日曜日の店舗営業禁止が紹介されていたが,この,怠け者同盟は漁業の世界ではすでに取り入れられているのではないか.
参照:漁獲可能量

同盟が成り立つ理由は,?漁獲可能な資源の最大数が定められている,かつ,?抜け駆けをした際の罰則(コミュニティーからの追放や将来の漁獲量の減少)が明らか,の2つが挙げられる.

この二つは,一般的な労働には当てはまらない.働けば働くほど,得られる資源(賃金)は増え,抜け駆けをした際の罰則も存在しない.また,そういった制度を作ることは現実的ではないだろう.

だからこそ,選択の自由が保障される仕組みが必要なのではないか.詳細はまだきちんと理解できていないが,ベーシックキャピタルベーシックインカムなどはそれを実現しうる.これらの仕組みを用いれば,ワークライフのバランスを重視することも可能だし,ワークを重視するインセンティブを失わせることも無い.

問題は,いかにして実現可能な制度を構築するという点だ.社会制度とはすべからく人間が作り出したものである.それゆえ不完全な部分も多いが,人はそれを改善する能力を持っている.従来の静的で変化しない制度ではなく,適応的に変化していく制度の設計論を構築することが求められているのだろう.